歌って聞かせてよ。
「やったぁ!」

私は大はしゃぎ。



「ははっ…変なやつだな。お前、名前は?」


えっ?

…名前??





えーっと…

「も…桃!桃っていうの!」


私はとっさにそう言った。
桃色は私が大好きな色だから。



「ふーん…。桃ね。ま、よろしく。」

「うん!」



「お前、患者じゃねーな。誰かの見舞いか?」



へ?

あ…そっか。


私は薄いピンクのワンピースを着ていたから、患者には見えなかったみたい。




「お見舞いっていうか…。」
私が何て答えようか迷っていると光輝君は勘違いして


「無理に言わなくてもいーよっ。」

って言って頭を撫でてくれた。



やっぱり、優しい。

私はそんな光輝君が愛しくて仕方がなかった。


私は窓から病室に入ると、窓の外を見渡した。



「光輝君はここからいつも見てたんだね。」


「あ?なんか言ったか?」

「あ、ううん。何にも。」


笑顔で誤魔化した。

そうだ…光輝君は私が木だったこと知らないんだった。


直ぐ忘れちゃうなぁ。
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