愚者
カウンターの中で温かいココアを入れて出す。酒を飲み乍する話でも無い。私はスツールに座っている母親を見て不思議と連帯感を感じてしまう。悲しみと云うのだろうか。身体に纏っている空気が哀愁に満ちている。
「本当に偶然だが、本人から聞いた内容だから判断は貴女に任せるよ」
「は、はい……」
 困惑した表情が、今から話す内容で更に悲しみで染める事に成るのだろう。私は意を決し、葵から聞いた内容を有りの侭に伝え出すと、母の顔色は途中から明らかに悪く成って行く。
「……その」
「どう云う対応をするかは、微妙な所だね」
「ですが―」
「貴女がどう云った対応をするかで大きく動き出す問題だ。他人の私が口を挟んで良い問題じゃない。只、有りの侭を伝えただけだよ」
「分かっています」
「混乱する気持は分かる。親子での会話はあるのかい?」
「先日、このお店に来た時に久し振りに話をしたんです」
「それは不味いかも知れないね。客観的な意見として受け取って欲しいんだが、良いかな?」
「……お願いします」
「先ずは良く話し合う事が大切だ。これは私の人生から来る経験則だがね」
「……意味は分かります」
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