愚者
今日、一体何度目の有難うなのだろうか。葵はそんな自分に驚きを覚える。言葉が軽く成っている。殆ど癖と云っても良い。だが中身の伴わない感謝の意を示す寄りも、今、小夜子の前で自然と出た感謝の気持は嘘偽り無く本心から出た言葉だ。
「実は……」
葵は学校での出来事をゆっくりと掻い摘んで話をする。クラスメイトの遠巻きなイジメと、荷担する事は無いが、耳に届く他の生徒達の醜聞の数々。冷静に自分で話をしていたとしても、カナリ酷い状態だ。小夜子は、そんな葵の話を聞いている間に、恐ろしく不機嫌な表情へと変貌して行く。怒りが臨界点に達したのか、不意に湯呑を手に取り一口啜ると、鋭い眼付きに成り話し出す。
「それは確かに酷いね」
「でも……」
「云いたい事は分かるよ。お母さんに心配を掛けたく無い、だろう?」
「うん」
「でも、現実問題として考えると、黙っていたとしても問題の解決には成らないね。寧ろ酷い状態に成ると思うよ」
「それは……」
「十二分に分かっていると思う。だけど、何か悪意を感じる内容だね」
「……そうだと思う」
「別に君が悪い事をした訳でもないし、それ以前にまだ転入したばかりで人間性を知る事は不可能だからね」
「でも」
「誰がそんな事をするか、だろう?」
「うん」
「僕自身かなり不思議に思うね。葵君には何の非も無い訳だし。仮に非が有るからと云って、イジメて良い道理は無い。遠巻きに見ている人間も間接的に加担している様な物だ。心理的には、関わる事で標的に成りたく無いと云うのは有るんだろうけど、それでも釈然としないね」
「実は……」
葵は学校での出来事をゆっくりと掻い摘んで話をする。クラスメイトの遠巻きなイジメと、荷担する事は無いが、耳に届く他の生徒達の醜聞の数々。冷静に自分で話をしていたとしても、カナリ酷い状態だ。小夜子は、そんな葵の話を聞いている間に、恐ろしく不機嫌な表情へと変貌して行く。怒りが臨界点に達したのか、不意に湯呑を手に取り一口啜ると、鋭い眼付きに成り話し出す。
「それは確かに酷いね」
「でも……」
「云いたい事は分かるよ。お母さんに心配を掛けたく無い、だろう?」
「うん」
「でも、現実問題として考えると、黙っていたとしても問題の解決には成らないね。寧ろ酷い状態に成ると思うよ」
「それは……」
「十二分に分かっていると思う。だけど、何か悪意を感じる内容だね」
「……そうだと思う」
「別に君が悪い事をした訳でもないし、それ以前にまだ転入したばかりで人間性を知る事は不可能だからね」
「でも」
「誰がそんな事をするか、だろう?」
「うん」
「僕自身かなり不思議に思うね。葵君には何の非も無い訳だし。仮に非が有るからと云って、イジメて良い道理は無い。遠巻きに見ている人間も間接的に加担している様な物だ。心理的には、関わる事で標的に成りたく無いと云うのは有るんだろうけど、それでも釈然としないね」