愚者
第八章 気配
小雨がアスファルトを濡らす。私はカウンターの中で煙草を咥え乍、有線から流れるBGMに身を委ねていると、入り口のドアが開かれた。
「まだ、やってるかいな?」
「もう少しで一旦締める所だったよ」
「そりゃタイミングが良かったわ」
関が苦虫を噛み潰した様な顔で店に入ると、派手にコートを脱ぎバサバサと水気を取り払う。
「どうしたんだい?随分と機嫌が悪そうに見えるけれど」
「話は後や。何か温かい飲み物貰えるか?」
「少し待ってくれないか。込み入った話なら、一旦店を閉めてからの方が良いからね」
「悪いな」
「いや、もう直ぐ一旦締める所だったから別に気にする事は無いよ」
「なら、甘えさせて貰うわ……」
関が不機嫌極まりない態度を露骨に表すのは珍しい。何か問題があったのだろう。私は小雨で濡れている外を眺め乍、看板の灯りを消して店内に放り込みカウンターに戻ると、ホットココアを関の為に準備をする。
「何か問題でも起きたのかい?」
「問題所の騒ぎとちゃうで……」
関は忙し無い動きで懐から煙草を取り出し、私は、サッと灰皿を出し、カップに温かいココアを入れてカウンターに出す。
「ほんまに胸糞が悪く成る話や!」
「珍しいね、そんなに和さんが怒るなんて」
「ワシが仕事の依頼を受けたのを云うたやろ?」
「確か、ヘッドハンティングだったよね」
「そうや」
「それが、どうかしたのかい?」
「それがとんでも無い案件やったんや」
関の全身から殺気にも似た気配が漂い出す。ここ迄殺気立っている関は珍しいと云うか初めて見たと云っても良い程の怒り具合だ。
「何があったんだい?」
「どう説明したら良いもんか……」
関は暫く天井を見上げて逡巡する。元々裏側の人間である関がここ迄悩むと云う事は、それ成りと云うか相当の問題なのだろう。
「時雨相手に隠しても仕方ないから全部話をする積りで来たんやけど、構わんか?」
「ああ。それに気に成るしね」
小雨がアスファルトを濡らす。私はカウンターの中で煙草を咥え乍、有線から流れるBGMに身を委ねていると、入り口のドアが開かれた。
「まだ、やってるかいな?」
「もう少しで一旦締める所だったよ」
「そりゃタイミングが良かったわ」
関が苦虫を噛み潰した様な顔で店に入ると、派手にコートを脱ぎバサバサと水気を取り払う。
「どうしたんだい?随分と機嫌が悪そうに見えるけれど」
「話は後や。何か温かい飲み物貰えるか?」
「少し待ってくれないか。込み入った話なら、一旦店を閉めてからの方が良いからね」
「悪いな」
「いや、もう直ぐ一旦締める所だったから別に気にする事は無いよ」
「なら、甘えさせて貰うわ……」
関が不機嫌極まりない態度を露骨に表すのは珍しい。何か問題があったのだろう。私は小雨で濡れている外を眺め乍、看板の灯りを消して店内に放り込みカウンターに戻ると、ホットココアを関の為に準備をする。
「何か問題でも起きたのかい?」
「問題所の騒ぎとちゃうで……」
関は忙し無い動きで懐から煙草を取り出し、私は、サッと灰皿を出し、カップに温かいココアを入れてカウンターに出す。
「ほんまに胸糞が悪く成る話や!」
「珍しいね、そんなに和さんが怒るなんて」
「ワシが仕事の依頼を受けたのを云うたやろ?」
「確か、ヘッドハンティングだったよね」
「そうや」
「それが、どうかしたのかい?」
「それがとんでも無い案件やったんや」
関の全身から殺気にも似た気配が漂い出す。ここ迄殺気立っている関は珍しいと云うか初めて見たと云っても良い程の怒り具合だ。
「何があったんだい?」
「どう説明したら良いもんか……」
関は暫く天井を見上げて逡巡する。元々裏側の人間である関がここ迄悩むと云う事は、それ成りと云うか相当の問題なのだろう。
「時雨相手に隠しても仕方ないから全部話をする積りで来たんやけど、構わんか?」
「ああ。それに気に成るしね」