愚者
「そう成るな。話を聞いた限りじゃエゲツナイが、俺達が個別で動く事は殆ど無い。先ず学校の規模にもよるが無論学校側からの圧力があるし、どうしても自己申告の部分が大きい。自己申告の場合、お前さんの云う家族や周りを巻き込みたく無いと云うのは、物理的に不可能だ。イジメを無くし命を守ると成ると、今以上のストレスが付き纏う」
「本当に腐っているね」
「そう云われても仕方ねえな。だが、現実問題としては今説明した通りだ。だが、今の侭で良いと云ってる訳じゃねえ」
「それは分かるよ」
「問題は本人の覚悟の問題だ。カミング・アウトするのは簡単だが、起こり得る弊害から来る心労も覚悟するしか無い。文句を云う奴は、何をしても云う物さ。下手な正義感を持って糾弾するヤツ等こそ、一番恐ろしい存在だな」
 富田はある程度喋り終わったと云う風に懐から煙草を取り出すと、小夜子が鞄からライターを取り出し火を近付ける。
「すまねえな」
富田は小夜子がライターを持っている事には一切触れずに火を借りる。富田の中では、富田の価値観の元で綺麗に線引きをしている。小夜子もその辺りを踏まえて、当たり前の様にライターを差し出したのだろう。
「今云ったのが現状だ。それを踏まえてお嬢ちゃんはどうするんだ?」
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