愚者
富田は不意に話の矛先を葵に振る。だが、想像通りと云うか葵は答えに窮したのか、何も云う事無く俯いた侭で黙り込む。
「この場で葵君にアンサーを求めても難しいと思うね。今の所は僕が傍に居るから連中は何もして来ないけど、正直云えば根本的な解決に成って無いからね。だけど刑事さんの話を聞いた限りじゃ、法的な手段も難しいね」
「少年法が厄介なのさ。それに、そいつ等の巧みな手腕には正直驚いている。絡め手を使うとしても。表に出さすに解決と成るとかなり難しいだろう」
 自体は急を要するが、葵の意向が表立っての解決を求めてないので有れば、もう水掛け論に成るだけだろう。後は母親で在る彼女が如何云う対応をするかで変わって来る。
「本当に解決する気に成って覚悟を決めた時はここに電話すると良い。これも何かの縁だ、少し位は力に成れるかも知れんからな」
 富田はナプキンにサラサラと番号を書いて葵に手渡すと、私の元に戻って来た。
「勘定だ」
 私は富田の言葉を受けて伝票をソッと差し出すと、富田は金額通りの金を置いて財布を仕舞い込む。
「何か情報が有ったら教えてくれ。これは一個人としての願いだ」
「あれば良いますよ。最初に思った程に非情な人でも無さそうだ」
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