愚者
「分かっています……」
「自分を責める事だけは、絶対に止めて置くんだよ……」
泣き疲れたのか、葵の瞳からは涙が浮かぶ事が無く、只、物悲しげな気配だけが漂い俯いた侭で黙り込む。そんな葵に、時雨は何も出来無い現状に若干の歯痒さを覚えるが、これ以上立ち入る領域では無い事は分かっているとばかりに、それ以上は何も云う事をしなかった。
「明日、学校に行ってみます……」
「そうか……無理だけはしたら駄目だよ」
「有難う御座います」
葵は冷めた紅茶を一息で飲み干し、財布から金額分のお金をカウンターに置きドアを開けて外に出る。自分を確りと持たないと駄目だと何度も云い聞かせるが、矢張り小夜子の事を思うと心が激しく揺れ動く。一歩ずつ自宅へと向けて歩いていると、忙し無く走る人達とすれ違う。この中の人達の何人がイジメを受けたり、したりしたのかと思うと、少しだけ人間が嫌いに成り、そんな自分も同じ人間だと云う事に改めて幻滅する。そんな中、トボトボと歩いていると身体に軽い衝撃を受ける。
「きゃっ!」
軽く踏鞴を踏み、倒れそうに成るのを何とか持ち応えると「すんまへん」と謝罪の言葉を残して男が走り去るのを見送り、葵は踵を返しトボトボと自宅へと向けて歩いて帰った。
*
第十章 運命
もう後五分もすれば一旦店を閉める積りで店内を掃除していたら、ドアが激しい音を発て開く。
「もう、店仕舞いかいな?」
「もう少しで一旦閉める積りだけどね」
「そうか……」
「まあ良いさ」
「自分を責める事だけは、絶対に止めて置くんだよ……」
泣き疲れたのか、葵の瞳からは涙が浮かぶ事が無く、只、物悲しげな気配だけが漂い俯いた侭で黙り込む。そんな葵に、時雨は何も出来無い現状に若干の歯痒さを覚えるが、これ以上立ち入る領域では無い事は分かっているとばかりに、それ以上は何も云う事をしなかった。
「明日、学校に行ってみます……」
「そうか……無理だけはしたら駄目だよ」
「有難う御座います」
葵は冷めた紅茶を一息で飲み干し、財布から金額分のお金をカウンターに置きドアを開けて外に出る。自分を確りと持たないと駄目だと何度も云い聞かせるが、矢張り小夜子の事を思うと心が激しく揺れ動く。一歩ずつ自宅へと向けて歩いていると、忙し無く走る人達とすれ違う。この中の人達の何人がイジメを受けたり、したりしたのかと思うと、少しだけ人間が嫌いに成り、そんな自分も同じ人間だと云う事に改めて幻滅する。そんな中、トボトボと歩いていると身体に軽い衝撃を受ける。
「きゃっ!」
軽く踏鞴を踏み、倒れそうに成るのを何とか持ち応えると「すんまへん」と謝罪の言葉を残して男が走り去るのを見送り、葵は踵を返しトボトボと自宅へと向けて歩いて帰った。
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第十章 運命
もう後五分もすれば一旦店を閉める積りで店内を掃除していたら、ドアが激しい音を発て開く。
「もう、店仕舞いかいな?」
「もう少しで一旦閉める積りだけどね」
「そうか……」
「まあ良いさ」