愚者
関が単刀直入な形容で切り出して来たので、私は微かに笑みを浮かべて頷く。確かに年齢的には「バアサン」と云う表現が適しているのかも知れないが、私達自身も若くは無いのだから、複雑な気分だ。
「難しい話だろう?」
「まあ、色々な意味で複雑ではあるな」
「それなら年長者の意見を聞くのも必要だろうと思うし、的外れな事は云わない人だから参考に成ると思うよ」
「せやな。この間の意見もかなり有意義やったしな」
「じゃあ、少しだけ準備をするから待ってくれないか」
 私は二階の部屋に上がり普段着に着替える。タイトなジーンズにジャケットを羽織り階下に行くと、関が待ち遠しいとばかりにスツールから立って外を眺めている。
「何か見えるのかい?」
「いや……こうして見とる人の群れの中に、空恐ろしい事を考えとる奴が存在しとると思うとな……」
「想像するだけなら、個人の自由さ」
「せや。やけど実際にワシが請け負っとる仕事の輩見たいな、意味不明としか云えん奴等も居とると思うとな……」
「そんな時代なんだろうね」
「そう思うしかないんかの……」
 関にしては珍しく道に迷っていると思う。私は関の肩を軽く叩き外に促す。今この場所で考えても仕方が無い事だ。
「行こうか」
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