愚者
南條が珍しく興味を持っている。関は、そんな南條に事の経緯を細かに説明を始める。関が独自に集めた情報を元に、推測と現実の両方からの説明は簡素にして分かり易く、南條はビールを飲み乍関が話す内容を聞いては静かに頷いたり、合いの手を入れたりと巧みに話し易く仕向け、私と関が話し合いをした以上に短時間で説明を進めて行く。私はビールを片手にテーブルに置かれた写真に視線を向ける。まさか関が関係している事件にこの子が絡んでいるとは思わなかった。だが、その点を踏まえて葵が話していた内容を振り返ると、確かに納得出来る点は多々見えて来る。
 元々イジメとは理不尽な物だが、葵の場合は特出していた。転入生と云う存在は、云い変えれば異文化を持ち込んで来る異端者と云える。その上で第三者と云うか、元々構築されていたクラスと云う単位に流動的な動きを派生させる。その際、異端者扱いの転入生に対し、元来在籍する生徒達は如何触れたら良いのか分からない上に、転入者との距離感の問題でクラス全体が困惑するのは理解出来る。だが、知り合って間も無い相手がイジメの対象に成るのも変な話ではある。その点を踏まえた場合、ある種の意図的な悪意が働いていると感じるのは至極当然の事だ。しかし複雑な物だ。奇妙な符号と云っても良いのかも知れない。私は関が話している内容を聞き、胸糞が悪く成る。私自身誉められた人生では無いが、今回の案件に対しては反吐が出る。コソコソと動き回り、人を対象として賭けをする等常軌を遺脱しているとしか思えない。私は関が苦渋の表情を浮かべて説明をし終わるのを見計らい、懐から煙草を取り出して一服点けていると、南條が指先で合図をする。煙草の督促だ。私は煙草を差し出して火を点けると、南條が不味そうに紫煙を吐き出し軽く肩を回す。
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