愚者
「高々数十年の人生やけど、濃度って意味では濃い道を歩んどる積りやからな。その辺り、人間の欲望の抑え方はマスターしとる積りやし、裏の業界では、色々な意味でワシの名前だけは有名やからな。顔自体は噂程には知れ渡っている訳でも無いし。そのヘンを上手く使えば、本能的な恐怖心を煽る事も抑圧したりも出来るんや。まあ、今回依頼した相手は、信用出来る相手やから問題はあらへんけどな」
「何だか、難しい話だね」
「そうか?」
「それより、一つだけお願いがあるんだ」
「なんや?」
「さっきの写真、貰う事は出来ないかな?」
「なんや急に?」
「少しね、思う所が有るんだよ」
「データーはPCに入っとるから構わんけど……」
「恩に着るよ」
 私は関の追及を避ける為に曖昧な言葉で場を濁す。そうする事で、関も必要以上に追及をする事は無い。関は深く追求する事をせずに懐から写真を取り出し手渡してくれた。
「ほな、今日は色々と迷惑を掛けたな」
「それより、気を付けるんだよ」
「死んだら意味無いからな。その辺りは上手くやるわ」
 関はその言葉を最後にスタスタと歩き去る。私は手に持った葵の写真を眺め、複雑な運命めいた物を感じ乍人ゴミを避ける様に道の端を歩き帰る事にした。

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