愚者
「何処から説明をしたら良いのかな……」
「云いたく無いなら別に構わヘンけど、ワシの件と被っとるさかい、知りたいのはあるな」
 当然の権利だと思う。今迄関が私の過去に触れた事は一度も無い。それは複雑な過去を持っていると思われる関に対して私も詮索をしないからだ。こんな関係でも続いて来たのは、互いに世の中や人間の裏を見過ぎた結果だろう。だが、そんな関係が有っても良いと思い、互いに良好な関係が続いて来たが、この状況下で隠し事をしている場合では無い。
「和さんが知る権利は勿論有るだろうと思う。その上で話をするけど、体調は大丈夫かい?」
「聞く力位は残っとるで……」
 薬が効いて来たのか、関の顔に若干の余裕が見て取れる。何処から話した物か若干の逡巡をするが、この状態で隠しても仕方が無い。素直に有りの侭を話せば良いだけの事だ。
「和さんは、今迄私の過去を一切尋ねなかったよね」
「過去は過去やからな。今が大事やとワシなんかは思うから、詮索をする事はせんな。時雨もワシの事を詮索をせんかったやないか。そう云う意味では、良好な関係やと思っとるで」
「分かったよ。それも踏まえて少しだけ過去の話に遡るよ。その上で今回の件に繋がるんだ」
「分かった……やけど、酒を少しだけ貰えんか?」
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