愚者
―妹は如何しているだろうか
不意に頭に過ぎる妹の存在。大雨が振る逃亡の日に、私は妹を児童施設の前に置き去りにしてその場を後にした。
逃亡前。家族と暮していたのは東京都の端に位置する場所だった。私は先ず北へと逃亡を始めた。手持ちの金は五千万。欲しいと思った金を握った瞬間に失った平穏な生活。その金は施設に預けた妹へと、匿名で毎月決まった額を送金した。私なりの誠意の積もりだが、簡単に云えば、妹を捨て人を殺めた罪を、金を送ると云う行為で薄めたいからだ。
―偽善者だな
私は布団の中で過去を振り返り乍、モソモソと身体を起こしてベッドから這い出し、キッチンへと行きコンロに薬缶を置き湯を沸かす。秋の空気が身体に纏わり付き微かに震える。喫茶店の親父がインスタント珈琲と云うのも可笑しな話だが、自分の事に成ると途端に面倒臭く成る。
不意に頭に過ぎる妹の存在。大雨が振る逃亡の日に、私は妹を児童施設の前に置き去りにしてその場を後にした。
逃亡前。家族と暮していたのは東京都の端に位置する場所だった。私は先ず北へと逃亡を始めた。手持ちの金は五千万。欲しいと思った金を握った瞬間に失った平穏な生活。その金は施設に預けた妹へと、匿名で毎月決まった額を送金した。私なりの誠意の積もりだが、簡単に云えば、妹を捨て人を殺めた罪を、金を送ると云う行為で薄めたいからだ。
―偽善者だな
私は布団の中で過去を振り返り乍、モソモソと身体を起こしてベッドから這い出し、キッチンへと行きコンロに薬缶を置き湯を沸かす。秋の空気が身体に纏わり付き微かに震える。喫茶店の親父がインスタント珈琲と云うのも可笑しな話だが、自分の事に成ると途端に面倒臭く成る。