愚者
「今日は何時も以上に絡みますね」
「そうかしら?」
「何か不機嫌に成る理由でも?」
「さぁ、どうかしら」
 何気ない会話を交す筈が思わず深い内容の会話に成ってしまった。私は酒の肴を食べ乍、ボンヤリと色々と考えて見るが、今にも頭がパンクしそうに成る。
「アンタも、良く考えて生きるのよ」
 南條が私の心の奥を見透かした様な言葉を投げ掛けて来る。私は深層心理を抉られた様な気分を味わい乍、曖昧に頷き立ち上がる。
「もう、帰るのかい?」
「ええ」
「毎月の売上、期待しないで待っているわよ」
「ある意味、期待に添う様な結果に成るかも知れませんがね」
 皮肉に近い言葉の応酬をして玄関に移動していると、クラリと眼の前が揺らぐ。然程飲んで無い筈だが、足元が微かに揺れる。
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