愚者
 私は南條が語る複雑な内容を整理する為に考えて要ると、先日、関と話をした内容で有る「イジメ」と云う言葉が脳裏を過ぎる。人間社会が在る限り、家庭内や学校だけに限った事では無く、何処迄行ってもイジメは存在すると云う事を示唆している内容だ。圧力と云う、精神的、物理的なイジメも有れば、自己保身の為に、地位の引くい者を利用した遁走と云う方法も広義で見ればイジメに該当するのだろう。
「今の世の中はね、利便性や欲求を満たし易い反面、正しく狂っているのよ」
「正しく狂っている?」
「人間本来の欲望に流され従い易い世の中って意味よ」
「……欲望ですか」
「お金が欲しい、地位が欲しい、異性に持てたい。人間の欲望何て果てしなくて儚い物よ。今の世の中は、ある意味では自己の欲を満たし易い反面、幼稚過ぎる云い訳で逃げる大人に成れない馬鹿な大人が多いのよ。ニュース等を見ていれば直ぐに分かるでしょ?」
 私は南條の言葉に返す言葉が見付からずに答えに窮する。自己の欲望に流され易いと云う点では、私に糾弾する資格は無い。
「アンタは決して自分の過去を語ろうとしないけれど、案外そう云った後ろめたい過去があるんじゃないの?」
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