愚者
「どうしたの?」
「紅茶入れたけど飲む?」
「うん……」
葵がベッドの上で返事をすると、母は嬉しそうな表情に成りダイニングへと戻る。擦れ違いの生活が続く中、久し振りの家族の温もりを感じる事が出来る嬉しさに、葵も直ぐに後を追う様にして付いて行く。
ダイニングキッチン。テーブルの上には温かい紅茶とクッキーが置かれている。
「ゆっくりと話すのは久し振りね」
椅子に座った母が優しく語り掛ける。確かに引越しをしてからゆっくりと話した事が無い。葵は母の問い掛けに頷き席に付いて正面を見る。
―少しやつれたのかな?
葵はカップを手に持ち少しだけ心配に成る。離婚をしたと云っても表面的な戸籍はその侭で置いているので、実際には別居中と云う事に成っている。父親からは幾らかの生活費は振り込まれるが、母は先行きの事を考えて働きに出ている。だが、かなり不規則な仕事の様で、昼夜を問わずと云った具合で、日増しに疲れて行くのが分かる。そんな母の事が葵は心配に成り「どんな仕事なの?と聞くと、母は「電化製品のクレーム処理のデスクワークよ」と云って詳しく喋ろうとしない。日増しに陰が出来る母を、葵は複雑な思いで見ていた。その母が久し振りに浮かべた笑顔は、葵を心底安心させる。
「学校はどう?」
「うん。友達がね、出来たんだ」
「あら。どんな子なの?」
「自分の事をね、僕って云うの」
「男の子?」
「紅茶入れたけど飲む?」
「うん……」
葵がベッドの上で返事をすると、母は嬉しそうな表情に成りダイニングへと戻る。擦れ違いの生活が続く中、久し振りの家族の温もりを感じる事が出来る嬉しさに、葵も直ぐに後を追う様にして付いて行く。
ダイニングキッチン。テーブルの上には温かい紅茶とクッキーが置かれている。
「ゆっくりと話すのは久し振りね」
椅子に座った母が優しく語り掛ける。確かに引越しをしてからゆっくりと話した事が無い。葵は母の問い掛けに頷き席に付いて正面を見る。
―少しやつれたのかな?
葵はカップを手に持ち少しだけ心配に成る。離婚をしたと云っても表面的な戸籍はその侭で置いているので、実際には別居中と云う事に成っている。父親からは幾らかの生活費は振り込まれるが、母は先行きの事を考えて働きに出ている。だが、かなり不規則な仕事の様で、昼夜を問わずと云った具合で、日増しに疲れて行くのが分かる。そんな母の事が葵は心配に成り「どんな仕事なの?と聞くと、母は「電化製品のクレーム処理のデスクワークよ」と云って詳しく喋ろうとしない。日増しに陰が出来る母を、葵は複雑な思いで見ていた。その母が久し振りに浮かべた笑顔は、葵を心底安心させる。
「学校はどう?」
「うん。友達がね、出来たんだ」
「あら。どんな子なの?」
「自分の事をね、僕って云うの」
「男の子?」