愚者
「その俺が読めねえ。この街に来て色々な根回しをしたんだ」
「大変な労力だ」
「それでも統括している組織が見えねえ」
「眼が曇った?」
「そうじゃねえ。幽霊組織と云われる表面的な組織は掴んでいる。だが、それは所詮幽霊組織だ。本質が見えねえ」
「正義感から?」
「馬鹿らしい。カスる為だ」
「とんだ刑事も居た物ですね」
「綺麗事で生き抜ける程に生易しい時代じゃねえ。正義感ぶるなら貫き通せば良い。逆に云えば、アウトローを気取るならそうすれば良いだけだ」
「難しい話ですね」
「お前さんは、どっちだ?」
「考えた事が無い」
「素性は調べさせて貰ったが、全く掴めねえ」
「私を疑うのなら見当違いですよ。私はしがない喫茶店のマスターでしかない」
「平凡なマスターの素性を洗い出したんだ。何も掴めねえ訳がねえ」
「疑り深い人だ」
「適材適所ってやつでな。刑事は適職だと思っている」
「進む道を間違え無くて良かったですね」
「ヤクザがお似合いだと?」
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