愛してるのに愛せない
「彩は、私とは血が繋がっていない。でも、彩がエイズだということは再婚する前から知っていたよ…」
「えっ…」
「私の妻…彩の母親から聞いたからね。それでも私は家族になることを選んだ…。正直な話、私の親からは反対されたけど…押し切るくらいに愛していたからね。もちろん彩のことも…」
「そうだったんですか…。でも、彩はあなた達のことを嫌ってます…」
「それは、彩が男性不信だったからだろうね。支えになるつもりが、逆効果だったみたいだ…はは…」
彩の義理の父親…ということになるこの人は、悔しそうに苦笑いをしている。
本当に彩のことを想っている証拠だ。
「彩は…エイズだということを知ったのは…?」
「もちろん病院で調べた結果が出た時だ。」
「すいません…聞きたいことが今、ごちゃごちゃしてるんですが…お父さんは彩のことをどう思っているんですか?」
父親は、曇りもない笑顔で俺に言った。
「もちろん、愛しているよ。妻と同じくらいに。そして、それはこれからも変わらない。私は家族を守りたいと思っている。例え、彩に嫌われていようとも私は守るつもりだよ。」
彩は何が不満だったのだろうか…。
その答えがわからないまま、俺は大輝たちのことを考えた。
「さて、そろそろ探しに行った方が良さそうだね…」
「そうですね。でも、ここに居てください…。もしかしたら帰ってくるかもしれないので…」
そう言って俺は立ち上がって彩の家から出ようとした。
「あ、待って…」
リビングから出ようとしたとき、彩の母親に呼び止められた。