ドラゴン・テイル

 建物は有り得ない角度で停止していた。

 いや、支えられていたと言うべきだろうか。



 薄い橙色の何かが二つ、倒れ来る建物を支えるような形で浮いている。
 人を象ったそれの体は半透明に透けているように見えた。

 ウルと同じようにゆっくりと顔を上げたレナが、その二つの物体を見て驚いたように声を上げた。

「シェール!」

 ─シェール?

 流れからすると、あの物体の名前だろうか。


 不思議な……と言うより異様な光景を目の当たりにしている間に、レナがウルの腕をすり抜けて走り出した。

「お、おいっ!」

 慌てて静止しようとするが、寸での所で間に合わず、レナはキスティン達のもとへ走り去った。

 もう一度、あの物体─シェールを振り仰ぐように見る。

 顔部分は見えないが、体は人間の幼児程度しかない。


 ─あんな小さな体で支えられるのか…?

 疑問に思ったが、実際目の前で支えている姿を見ると認めざるを得ない。


「焦らないで! ゆっくりで良いのでここから離れてください!」

「押さないで! みんな、手伝って!」

 聞こえてきた声は、レナとキスティンの声。


 ……無事だったか。
 ウルはほっと胸を撫で下ろすように息を付き、レナを追いかけるようにキスティン達の所へ足を向け………


 ガガガガガガガッ


 嫌な音が再び辺りに沈黙を落とした。


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