ドラゴン・テイル
倒れかけている建物の奥から何かの影が横切るのを、ウルは見逃さなかった。
─………あいつ。
この事態を招いた本人だと、嫌でも分かる巨大な影。
影は、傾いている建物の奥隣を次の標的に決めたのか、体を押しつけるように建物を押し始めた。
ガガガガガ……ミシミシミシッッ
かかるはずのない圧力に耐えかねて、建物が悲鳴を上げるように軋む。
その音に気づき、レナ達が慌てて誘導しなおす。
「ダメですっ! そっちは危険です!」
「反対反対! あっちに逃げてってば!」
だが、パニックを起こした人たちの耳にレナ達の言葉は聞こえない。
─……間に合わないな…っ!
逃げる人の流れを見てから、ウルは目を閉じた。
ウルの足元が僅かに青黒く揺れ始める。
青黒くゆらゆらと揺れていた物が徐々にに黒い炎となって吹き上げ、ウルの体を取り巻いた。
周りに居た人の視線がウルに向く。
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