ドラゴン・テイル
黒い炎を身にまとい立ち尽くすウルの姿は、異様な光景だった。
周りにいる人達もどうしていいのか分からず、ウルを囲うように輪を広げ距離を取っている。
ゆっくり、ウルは瞼を開いた。
視線を自分の右腕に落とし、集中を高める。黒い炎がウルの体を這うように移動し、右腕に収束していった。
視線を巡らせる。
目をいっぱい広げて恐怖に満ちた視線をせわしなく辺りに配る者、諦めたように呆然と立つ者、傷を負い倒れている者。
そして、混乱を招くもの……─。
「……頭(ず)がたけぇんだよ…」
ボソッと呟き、ウルが地を蹴った。
全速力で、影との距離を縮める。
「おい! あいつ、ウルとか言う奴だ!」
「魔術師か?!」
「道開けろお前ら!」
強い不安と僅かな期待、そんな色を秘めた視線をウルに投げかけながら、人が道を開ける。
前方に、クレイグの頭が見えた。
「クレイグ!!」
走りながら、ウルはクレイグに向かって叫ぶ。
位置的にあの謎の影が見えないクレイグはウルの声に気づくと、手伝いに来てくれたと思い手を振った。
「ウル! あっちに行った連中の誘導を手伝っ…」
「クレイグ、ちょい手伝え!」
クレイグの元にたどり着いたウルはクレイグの言葉を遮り、走る勢いを緩めることなく左手で裏襟首を掴むと、小さく呪文のような言葉を呟いた。
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