ドラゴン・テイル

 本当は、一瞬期待していた。

 人の姿で現れたラーマ。共に旅をしてやろうと言ってくれるのではないか、と。

 だが、振り向きもせずに立ち去る。

 少し落胆したような自分自身の気分に、ウルは驚きを隠せなかった。

 ─……っバカか俺は。二日前までは憎しみの対象でしか無かった存在だぞ。
 まさか自分がこんなにもドラゴンの言葉に期待を寄せていたとは……。

 軽く頭を振り、ウルは帰路についた。


 家に付くと、とりあえずの旅の準備に取りかかる。
 旅支度と言っても、特に持って行く物も思いつかず、魔専で購入した対魔法性を兼ねた少し丈の長いマントと、いざ戦闘になったときに魔力を底上げするためのロッド、近接攻撃に意外と重宝する短剣(ダガー)を手に取る。

 後は、簡単な食事だな…。
 非常食と言うやつだ。

 食物類は、明日出る時に買っていこう。後は、金か。

 ウルは、部屋の片隅にぽつんと置かれた小箱を手に取った。
「アンチワード」

 ウルがそう呟くと、小箱がカチッっと言う音と共にゆっくり開いていく。

 中には、大量の金貨がぎっしり詰まっていた。

 時々依頼されるモンスター退治の報酬を、必要最低限使う以外は全て小箱に入れて貯めていたのだ。
 小箱には、ウル以外開けれないよう施錠魔法を掛けている。

「ずいぶん貯まったな…」

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