シムーン
その仕草に、私の心臓がドキッ…と鳴った。

もっと、して欲しい。

もっと、あなたを感じたい。

もっと、夢中になりたい。

そんな思いが、私の心をいっぱいにする。

彼に触れるたびに、自分は欲張りになって行く。

彼を感じるたびに、自分はわがままになって行く。

こんなにも欲張りで、わがままだったなんて、自分でも思ってなかった。

今まで、自分でも気づかなかった。

「――真希…」

ガシャンと、椅子がひっくり返った音がした。

唇同士の重なった音が、静かなオフィスに響いた。
< 128 / 176 >

この作品をシェア

pagetop