シムーン
「そうか」

そう返事をした俺に、
「いい天気だなって思ったんです」

彼女が微笑んだ。

ふいに、重なった。

堺彩花と彼女が重なる。

違う、目の前にいるのは中原真希だ。

それが、どうしても堺彩花と重なってしまう。

違う、俺の目の前にいるのは違う人だ。

堺彩花なんかじゃない。

もはや、重症だった。

目の前の中原真希が堺彩花に見えて仕方がなかった。

プツリ…と、どこかで理性の切れる音が聞こえた。
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