シムーン
思う存分に夜景を眺めた後で、俺は息を吐いた。

テーブルのうえに、ふたを開けたワインとグラスを置いた。

ソファーに腰を下ろすと、グラスにワインを注いだ。

芳醇な甘い香りのそれは、まるでジュースのようだった。

それを1口だけ飲んで、息を吐いた。

鼻から抜ける香りに、1日の疲れが癒やされるのを感じる。

目の前の夜景を眺めながら、ちびちびとワインを口に運んだ。

だだっ広いだけの我が家には、誰もいない。

俺1人だけである。

グラスにワインを注ぐ音だけが静かな部屋に目立った。
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