シムーン
そんなことで電話してくれるなんて、わざわざご苦労なものである。

そう思いながら、明日の昼に忘れ物を取りに行くことを伝えた。

電話を切ると、俺は息を吐いた。

わざわざ連絡してくれるなんて、本当に健気なものだな。

と言うよりも、
「名刺入れくらい、どうってことないのに…」

俺は呟いた。

大事と言えば大事かも知れないが、たいしたヤツである。

そう思いながら、俺は少し笑った。

笑った後で、リビングに戻ってソファーに腰を下ろした。

ふと窓ガラスを見ると、自分と目があった。

瞳の中には、当たり前だが自分の顔が映っていた。
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