シムーン
「はい、森藤です」

電話に出たら無言だった。

何だ、イタズラか。

そう思って電話を切ろうとした時、
「もし、もし?」

少しうわずったような女の声が聞こえた。

「どちら様でしょうか?」

「あの…あたし、『Water Lily』の従業員…」

『Water Lily』――ああ、カフェの名前だ。

取引先との打ち合わせの帰りに寄ったんだったっけな。

そんなことを思いながら、俺は話を聞いた。

どうやら、俺が店に忘れ物をしたと言うことで電話をしたらしい。
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