シムーン
遠くにいるような、近くにいるような、そんな感じだ。

曖昧――そんな言葉がピッタリだと思った。

遠くて近い、曖昧な距離。

…よくわからない。

何故わからないのかも、よくわからなかった。

わからないのは、この距離なの?

それとも、彼の存在なの?

本当に、あなたは何者なの?

いろいろと浮かんでくる疑問に、息苦しさを覚えた。

そもそも、この距離が遠いのか近いのかどうかもわからない。

エレベーターが階を告げた。

息苦しさから逃れたくて降りようとした時、
「待って」

その声が聞こえたと思ったら、腕をつかまれた。

同時に、彼と目があった。
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