シムーン
腰に手が回っているだけでも、心臓がドキドキと鳴ってしまう。

鼻にいつかの甘い香りを感じた。

それにも、心臓が加速する。

そう言えば、彼と出会った時も私は胸の中にいた。

胸の中で、彼の甘い香りを感じたんだ。

「――森藤さん…?」

名前を呼んだのと同時に、唇が温かいものにふさがれた。

キスだった。

いつかした、彼とのキスだった。

「――んっ…」

苦しくて息ができない…。

ピチャッ…と、やらしい水音が聞こえたと思ったら口の中に彼の舌が入ってきた。

静かな会議室に、水音が響いた。
< 79 / 176 >

この作品をシェア

pagetop