アリィ


ビンゴ。


下着にはガールズウィーク幕開けの印。


なぜ週半ばで訪れるのだろう。


せめて土日だったら心静かにやり過ごせるのに、週後半は体育の授業が立てこんでいるから、やりづらいし体力的にもきついのだ。


しかもたしか今週からは持久走が始まるんだっけ。


見学したくても五十嵐先生はこういうことにまったく理解を示さないから、貧血で倒れない限り無理にでも走らされるのだろう。


あぁ、死にたい。


トイレに頭を突っこんで溺死してやりたい衝動をぐっ、とこらえて痛み止めを取りに部屋へ向かった。




その途中、我が家の電話が鳴った。


こんな家に電話をかけてくる物好きなんて、セールスかいたずらかアリィくらいものだ。


が、今アリィが私に電話してくる可能性は極めて低い。


いずれにせよ気を遣う必要などないので、私は乱暴な調子で電話に出た。


「はい、後藤です」


「おう、由紀子か」




父だ。




分かったとたんに血の気が引いた。


父と口をきいてしまった。


まだ許していないのに、恨みは晴らされていないのに。


今のは不可抗力だ、と思っても悔しくてたまらない。


それ以降、私は唇をかんで無言をつらぬいた。
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