アリィ


「逃げるついでにアリィを連れてったってことだよね。

でも来たのはノアひとりだけだったでしょ?意味分かんない」


「あの『負けないでっ!』のせいだよ、絶対」


「あー、あれは引いたよ。何のつもりだったんだろうね」


本当だよ。


本当だけど、他人がアリィをバカにしているのは、どうしてかすこぶる気分が悪い。


「ところでさ、そのあとカナエ達はつかまったの?」


「ううん。先生とかPTAも街中捜したけど見つかってないらしいよ」


「だから今朝も先生達、忙しそうにしてたんだ……」


「それより私は、あの後藤さんにびっくりしたんだけど」




息が止まった。


後藤さん。


私のことだ。




「ね、あれは痛かったよね」


「アリィなんかと一緒にいられる時点で普通じゃないとは思ってたけどさ」


「あのね、一年のとき後藤さんと一緒のグループだった子に聞いたんだけど、

後藤さんってすごい変で、みんな嫌がってたらしいよ」


「えー、後藤さんって、おとなしくて優等生に見えるけど」


「たしかに頭はいいけどさ。

ノリ悪いし、何かしゃべったと思ったら言うこと全部教科書みたいで、とにかく空気読めないんだって。

そんで、ときどきチョー変なことしたりするから恐いって」


「変なこと?」


「だから昨日みたいなことじゃない?

私もはじめはアリィなんかの相手させられて可哀想だと思ってたけど、

その話聞いたら二人はお似合いだって思うようになっちゃった」
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