アリィ
どういう経緯があったとしても、今アリィは五十嵐先生達に厳しく指導を受けているはず。
今までそれなりに生きてきて怒られ慣れていないのだから、怖気づいているに違いない。
きっと、しゅんとして帰ってくるはずだ。
そのとき私は優しく諭してあげればいい。
そうしたら、アリィは元に戻るに決まってる。
そうだ、そうに違いない。……
二時間目、麻生先生が担当する国語の授業。
アリィは帰って来た……麻生先生と一緒に、五分ほど遅刻して。
静まり返った教室のなか、私の隣の席に腰を下ろすそれは、私が知っているアリィでも、
さっきカナエ達と一緒に『運命の分かれ道』の前にいた『ギャル』でもなかった。
昨日のノアのように髪色戻しのスプレーをかけられたのだろう、頭から真っ黒な液を垂れ流し、
崩れた縦ロールにご自慢のポニーテールの面影はない。
スカートも太ももが丸見えなほど短くて、学校指定の白ソックスじゃなく黒のハイソックスをはいている。
間近で見れば見るほど、誰なのか分からなかった。
昨日あれからどうしたの?
カナエ達とどうなったの?
あんたは今、一体なにを思ってるの?
勇気を出して確かめようとしたのに、口から出てきたのは何とも頭の悪い質問だった。
「……大丈夫?」