アリィ
そりゃあ、顔にあれだけいろんなものを塗りたくれば、本当の人格はその下に閉じこめられて、別人格になってもおかしくはない。
そうだ、そうに決まってる。
あれはアリィの本当の姿じゃない、本音じゃない。
私の知ってるアリィは『ギャル』に浸食されてしまっているんだ!
「突然のことで、驚いたかもしれないが……」
「結婚したらいいよ」
父は豆鉄砲を食らったような顔で私を見た。
「あの白いスーツの人でしょ?よかったじゃない、結婚するといいよ。
おめでとう」
「そ、そうだ、けど……いいのか?」
「なんでわざわざ私に聞くの?そんなのお父さんの勝手で私には関係ないでしょ?
別にお母さんだって死んでるんだし、浮気じゃないし、何にも悪いことないじゃない」
「お前……」
「は?何、その顔。結婚したらいいって言ってるんだから、これ喜ぶところじゃないの?
だいたい今まで勝手につきあってたんだから、これから先だって勝手にすればいいじゃない。
それとも反対してほしかった?
私とお母さんを裏切って、よそで若い女と、汚らわしい、裏切り者とでもののしればよかった?
でもそんなの今さらでしょ、だってアンタはとっくの昔に私を捨てたじゃない!」
私のことを見てくれていたのはアリィだけ。
そのアリィが今、『ギャル』の仮面をかぶせられて苦しんでる。