アリィ
カナエ達にそそのかされて、本当の自分を見失っている。
私が助けなきゃ!
「由紀子……本当にお前、どうしたんだ……?」
その目は何だ?
なんだってお前がそんな目で私を見る権利が!
「うるさいうるさいうるさい黙れお前に何が分かるんだてめぇのことなんか知るか出て行け消え失せろこのクズが!」
わめき散らしている間にこの手はテーブルの端を引っつかみ、驚愕に顔をゆがませた男のほうへ力を放出させていた。
ひっくり返ったテーブルの下敷きになるのをかろうじて逃れた男はしかし、食べかけの料理を全身に浴びて、それはそれは無様。
こんな価値のないものを相手にしている暇はない。
私はアリィを救い出さなければならないのだ。
「……由紀子……」
もう何も聞こえない。
アリィのためにしなければならないことは何か。
それだけに全身全霊をそそぐ。
表情筋を動かすエネルギーさえ惜しい。
徹底的に集中して作戦を立てるため、私は自室へと退却した。