まーくんの部屋
「でもよかった。
だいぶ顔色も良くなったね。」
まーくんと至近距離で目が合う。
眠そう。
背後の時計を見ると、もう夜中の2時を回っていた。
「ま… まーくん寝なきゃ…」
「ん?」
咳と熱にやられた喉は、大きな声を発することができない。
「何? 何か欲しい?」
まーくんは前のめりになって、耳を私の顔に近づける。
「や…」
布団の端から手を出して、まーくんの体を押し返した。
その力は驚くほどに弱かったけど、まーくんには、離れてほしいと言ってることがちゃんと伝わったようで、目を丸くしていた。
「むこー…」
「向こう?
向こう行けばいい?」
コクンと小さく首を振った。
まーくんは振り返ってイスを向こう側に寄せたけど、その背中は何だか淋しそうで、小さくなっているみたいだった。
「ちが…の
あの 移る…から」
まーくんは背中を見せたままで、ぽそっと言った言葉は聞こえなかったのかなと思ったけど
一秒の間を置いて、まーくんはばっと振り返った。