腕時計
2年前の4月。梨奈を初めて見た。背は少し引くて、ショートカットの梨奈は、他の誰よりも可愛くて、綺麗だった。杏子は一目惚れした。「絶対友達になるんだ」
その梨奈は今の杏子にとってはなんでも話せる友達。「杏子〜!誕生日おめでとう!」
「昨日も夜中にお祝いしてくれたじゃん。ありがとう。でも昨年に引き続き彼氏なしの誕生日だよ。」
「ごめんね。あたしが今日バイトじゃなかったら一緒にお酒飲めたのに…」
「いいよいいよ。今日はひとりで優雅にお酒でも飲んで過ごすし。」
1限目の講義開始のチャイムが鳴る。チャイムの音と共に、背のちっちゃな小太りの教授が得意気にお決まりの棒を右手で振り回しながら入ってきた。左手に持った教科書を教壇に起き、生徒に笑顔を向けてきた。
「スタンドアッププリーズ!」やや発音のいまいちな英語を使ってきた。
「英語の講義じゃないのに。」とうしろから高木が呟く声が聞こえた。
「ねぇ、杏!誕生日おめでとう!」小声で高木が話しかけてくる。高木の声は小声にしてもハスキーボイスのためちょっと響いた。
「ありがとう。でも声ちょっと響いたよ。」杏子も小声で返事した。
< 3 / 16 >

この作品をシェア

pagetop