腕時計
4限目の終了を知らせるチャイムが鳴る。
「やばい。バイト遅刻する。杏子ごめんね。先に帰る。」
「うん。気を付けていってらっしゃい。頑張ってね。」
梨奈がバタバタと教科書を急いでカバンに入れて教室を出て行った。
「はぁ…」杏子は無意識に深いため息をついた。
「こらこら杏。ため息ついた分だけ幸せにげるよ。」うしろから高木がニヤニヤしながら言った。
「別に。逃げるほど幸せ感ないし。」高木は同じサークルのメンバーで、杏子はさばさばした高木が大好きだ。高木は寮には住んでいない。実家が近く、そこから車で通っている。
「杏。今日で21歳かぁ。あたしも来月誕生日くるよ。しかもイブの日だよ。彼氏もいないしかなり切ないイブ…」
そんなことをグチグチ言いながら、帰り支度をしていた。杏子もゆっくり教科書をカバンに押し込んだ。
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