腕時計
飲み放題の時間が終わった。寮の門限も近づいていた。それぞれ店に出る。なんかおかしなことに、みんなそれぞれ仲良くなった人と手をつないで歩いている。あたしの横にはメガネの彼がいた。でもあたしは自転車を持っている。
「手をつなぎますか?」
左手片手で小さな自転車を押す。右手で彼と手をつなぐ。見た目は決してよくないけど。それはそれはあたしにとって、とても幸せな時間だった。寮の前に来た。その手を離して、入り口に入る。みんなにお別れして手を振る。歩きだしたがまた振り返ってみると、メガネの彼がまだわたしに手を振ってくれていた。
あたしはふと思った。
名前聞いてなかったなぁ。
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