君が、イチバン。
「…若咲さんは、彼氏いるんですか?」
隣に座る長沼さんはどぎまぎしながら久しぶりのその質問を向けた。
ウーロン茶しか飲んでないのに赤い顔。
こういうのがシャイボーイだ。
「僕も気になるなー」
秋吉さんがニコニコしながらさりげなくビールを注ぐ。酔わす気だな。というか彼氏がいるとかいないとか、新人は公表する決まりなのか。めんどくせえ。
いませんよー、募集もしてませんよー、枯れてるんでー、ビッチなんでー、心の中でふざけていると、
「いない、筈でしたよね?」
含み笑いで答えたのは一条さん。
「筈でしたねー」
変なとこ見られたからな、へへっと笑い
を返しておいた。
「ぼ、ぼ、く…」
長沼さんが大きな瞳を私に向ける。
…ぼぼ?
秋吉さんが「僕、立候補します、って言いたいんだよ長沼くんは」と笑う、成る程、酒の場のジョークを鍛えたいんですね。
「立候補は三人まで受けますよー、早い者勝ちですよー」
ガハハと笑って親指を立てる。
「はは、若咲さん面白い」
「そうですか、褒めてくれたんで返杯です」
秋吉さんに空になったグラスを渡した。まじで酔ってきた。長沼さんは、まだ「ぼぼ」といっている。結局何が言いたいんだ。
「僕も、立候補しても大丈夫ですか」
ふいに横から聞こえたのは穏やかな優しい声。
「一条さんは却下です」
「即答ですか」
苦笑する一条さん。
「確実に泣かされる気がします」
実はSキャラと踏んでいる。