Camellia【短編】
「元気でね!!」
「うん。愛花もね」
「「ばいばい」」
呆気なく、あたしの高校生活は幕を閉じた。
最後に見た先生は沢山の生徒に囲まれて揉みくちゃにされていた。
でも何かを探すように視線だけがさ迷っていた。
あたしは何故か、言い様のない焦りを感じて早足に校舎を離れた。
記憶は美しいままがいい。
あたしは大人でカッコイイ先生が好きだった。
先生はあたしを気に掛けてた。
そんな淡い青春の想い出。
もしあたしの気持ちがただの憧れだったら?
もし先生の視線の先があたしじゃなかったら?
そんな現実は要らないよ。
ボンヤリと校舎を見上げ、始まりの場所を何気なく見る。
案外外からはっきり見える事に今さら気付いて恥ずかしくなった。
それと同時に少しだけ泣きたくなって。
あたしは図書館から視線を外し、俯きながら校門を潜った。