pure
「あれ?ぶれちゃってる。


もう一回 はいチーズ。



あれ?また


ぶれちゃってる。」



「早くしないと人がきちゃうよ。


ケイタイ貸して!!


俺が撮るから。


はい、チーズ。」



克己の顔が私の顔に近づいた。


「そんなに、近づいたら・・・」


「早く撮れてるか


確認して  ok?」



「上手に撮れてる。合格です。」


「撮る人が変わっただけで


同じケイタイでもキレイに


撮れるってことがはっきり・・・」



少し自慢げな克己の笑顔がまぶしくて


胸が切なくなってしまった。



「今日は時間を作ってくれて


本当にありがとう。」



「改札口まで送るよ。」


「ひとりで行ける。


もう立派な大人だから・・・


じゃあね。」



振り返らずに歩き続けた。


途中で振り返ってしまったら


頭の中がクラクラして


倒れてしまいそうだった。



その後、確かに電車を乗り継いで


かえってきたはずだけど


ちゃんとした記憶がなかった。


38度


久しぶりに会えた嬉しさと


別々の生活空間に戻っていく


寂しさで 私は発熱してしまった。



「こんなにも私はあなたのことが好き


なのに あなたはいつでも優しいのに


誰のことも愛せないなんて・・・」







< 153 / 173 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop