ばい
「仁…女の匂いがする。」
乃亜がメモに書いてたように午後から仕事だったため
俺は仕事場に行き楽屋に入ると尚輝が話掛けてきた。
「そうか?」
「女の所に行くのは良いけどシャワーぐらい浴びて来いよ。」
シャワー…か
俺は乃亜の部屋に泊まった次の日の朝は絶対にシャワーを浴びない。
だってシャワーなんか浴びたら
乃亜の匂いが消えるから…
って、良い年した男が情けないよな…
「まぁ、誰の所に泊まったか分かってるけど…」
「分かってるなら言うなよ。」
尚輝は俺と乃亜の関係を知ってる。
バレた時はすっげぇ反対された。
でも、俺が乃亜を傷付けるからとかじゃなくて
『仁が傷つくだけだ。』
いつもそう言われてた。
それが、どんな意味を…
どんな状況を指してるかは今でも分からない。
「また乃亜姉に振られた?」
「…振られてない。」
「その様子だと返事はもらえてないんだ。」
「…分かってるなら聞くなよ。」
「いつも言ってるだろ?
仁が傷つくだけだって」
いつも聞いてる尚輝のこの言葉は
なぜか、この日だけは心に刺さった。
その理由を知るのは一週間後だった。
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