Love Step
「杏梨ちゃん……?」


階段を降りていた杏梨にめぐみは目を疑った。


「あ、こんにちは めぐみさん」


はにかむ笑みを浮かべた杏梨を見てめぐみは心の中で驚いた。


やっぱり杏梨ちゃん……髪型が違うから別人かと思ったわ


「めぐみさん ゆきちゃんに先に帰るって言っておいてもらえますか?」


「え?ええ」


「お願いします さようなら」


杏梨は頭を下げて店を出た。


その時、すれ違った青年が立ち止って杏梨の方を振り返った。


「まさか、あのガキンチョ?」


三木 彩の弟 峻だった。


峻は急いで杏梨の後を追った。


「おい、待てよ!」


え?わたしの事?


聞き覚えのある声にビクッとして杏梨は恐る恐る振り向いた。


「やっぱりあのガキンチョだ 髪型が変わっていたから一瞬分からなかったぜ」


軽い足取りで杏梨の目の前に立った峻は言った。


近づかれて杏梨はじりっと後ろに下がる。


「あ、あの……何の用ですか?」


呼び止められて訳が分からない杏梨は戸惑った表情だ。


「ケガはどうだよ?」


一歩近づかれて杏梨は後ろに下がる。


「ケ、ケガはもう大丈夫です じゃ、じゃあ」


去ろうとした時、走ってくる自転車にぶつかりそうになった。


その時、グイッと腕を引っ張られてぶつかる事は避けられた。


「まったく、あぶなっかしいな」


杏梨の頭の上で声がした。


杏梨は峻に抱きとめられていたのだ。


絶句状態で急いで峻から離れる。


素早く離れた杏梨に峻は呆気に取られた。


すげー反応。

こいつ男慣れしていない?


真っ赤になって今にも逃げ出そうとしている杏梨を見て峻はニヤッと笑った。


「あ、ありがとうございました」


ペコッと頭を下げて行こうとすると手首を掴まれた。


「ちょ、ちょっと!?」


掴まれた手首と峻の顔を交互に見ている。


「お茶付き合ってよ」


仕事用の笑みを杏梨に向け、峻は強引に近くのカフェに連れて行った。



< 107 / 613 >

この作品をシェア

pagetop