Love Step
お風呂から上がって水を飲みにキッチンへ行くとゆきちゃんがコーヒーを入れていた。


「杏梨も飲む?」


「アイスカフェオレがいいな♪」


我侭を言ってみる。


「かしこまりました お姫様」


めんどくさそうな顔を一つも見せずに冷蔵庫から牛乳とたくさんの氷を出している。


お姫様……くすぐったい言葉だ。


くすぐった過ぎて顔が赤くなっているに違いない。


杏梨は雪哉のシャツの裾を掴んだ。


なぜかそうしたくなったのだ。


少し引っ張られた感を受けた雪哉は振り返り杏梨を見た。


「どうした?」


優しく聞かれて杏梨はかぶりを振る。


「あのね……わたし……少しは良くなってきたのかなって……」


自分から男性に触れる事が出来る。

近くにいても怖くない。

でもそれはゆきちゃんだから?

ううん、違う あの峻って言う人も大丈夫だった。


「もちろん 良くなってきているよ 抱き合ったりキスしたり出来るようになったんだからね」


杏梨の肩に手を置き唇に軽いキスを落とす。


頻繁にゆきちゃんはわたしにキスをする。

唇に触れるだけのキスだけど嫌じゃないし、もっとして欲しいと思ってしまう。

あの頃の自分と別人になった気がした。


* * * * * *


並んでソファーに座るとなんだか照れくさい。

隣に座ったゆきちゃんは真剣な表情でテレビを見ている。

わたしはテレビドラマの内容も頭に入らないくらいゆきちゃんを意識してしまっていた。


落ち着かない杏梨は喉の渇きを覚えて立ち上がった。


キッチンへ行き水を飲んで戻るとテレビは消されていた。


「もう終わっちゃった?」


まだあと10分残っていると思ったけど……。


「杏梨、ここへおいで」


優しい微笑みを浮かべ、ポンポンと叩かれた場所はゆきちゃんの膝の上だった。


「え////」


「杏梨?」


戸惑う杏梨に妖しい笑みを向ける。


「え、や……」


杏梨は真っ赤になって首を横に振った。




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