Love Step
その夜、悪友とも呼べる友人と会った時にその事を話してみた。


「お前、それって恋じゃねーの?」


高校からの悪友 健介が笑って言う。


「恋?」


峻は初めて「恋」の文字を聞いたようにポカンとした表情になった。


「何をしていても気になるんだろ?気がつかないなんてお前、どんだけ女と付き合ってきたんだよ」


呆れたように言ってウーロンハイを飲む。


高校の時など峻のファンクラブがあったほどだ。


峻は恋と聞いた途端に身体が熱くなったような気がしてビールをグイッと飲み干した。


「うわっ!いきなり一気飲みかよ」


グラスの中身を飲み干した峻は少しの間、じっと空のグラスを見つめ考え込んだ。


「峻?」


「……お前の言うとおりやっぱ、恋なのかもしれない」


ボソッと呟く。


「お前がそれほどまでに気にかかる女見てみたいな」


「俺が出会った女の中で一番変な女だよ」


そして……一番可愛いガキンチョ。



* * * * *



ゆずるさんに買ってもらった洋服を月曜日の朝着てみた。


サスペンダー付きのデニムのショートパンツに普通のロゴTシャツ。


フェミニンな服を学校に着ていく勇気はない。


今履いたデニムのショートパンツにも抵抗がある。


パウダールームで全身を映してから杏梨は「よしっ!」と大きな声を出して自分を勇気づけた。


勢いがつきすぎてパウダールームを出た所で雪哉とぶつかりそうになった。


「おっと」


とっさに杏梨の肩を支える。


「あ、ごめんなさい」


杏梨は慌てて言う。


「気をつけて、杏梨はそそっかしいから」


雪哉は杏梨の新しい姿を見てうれしそうに微笑んだ。


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