Love Step
* * * * * *


今日もゆきちゃんに送ってもらっちゃった。

毎晩遅く忙しいのに申し訳ないと思う。

ゆきちゃんにしてあげられる事はないかな……。

う~ん……そうだ!お店で働けないかな♪

お掃除くらいの雑用ならわたしにも出来る。


そんな事を考えながら下駄箱に向かって歩いていると香澄ちゃんの声が背後から聞こえた。


杏梨のトラウマに注意を払い、決して不意に杏梨に触れないようにしている。


「杏梨だよね!?」


杏梨の前に立った香澄は目を真ん丸くして見ている。


「お、おかしいかな……?」


あまりの驚きようにビクついてしまう。


「そんな事ないよ~ すっごく可愛い ほんとヤバいかも!」


何がヤバいのか杏梨は分からなかったが香澄の言葉に励まされてニコッと笑った。



* * * * * *



教室に入って少しすると男子が2人近づいてきた。


香澄と話をしていた杏梨は思わず身構えてしまいそうになる。


「お前、本当に西山?」


興味深そうな目で男子に見られて杏梨は呼吸が乱れ始める。


「岸谷っ、なに言ってんのよ 杏梨に決まってるでしょ!杏梨は元々可愛いんだからっ」


香澄が呆れた声を出す。


「日下に言ってんじゃねーよ」


そう言って俯いている杏梨の顔を覗き込もうとした。


……ぃ……や……。


胃からせり上がるような吐き気がこみ上げて来た。


突然、恐怖心に襲われて杏梨は乱暴に立ち上がった。


座っていたイスが大きな音をたてて倒れた。


「杏梨!?」


「か……すみちゃん……気分が……」


口元を片手で押さえてふらふらと教室を出ようとする。


「杏梨!」


香澄は杏梨を追って今にも倒れそうな身体を支えた。




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