Love Step
美咲の施術中、なにこれと俺を誘ってきた。


束縛をしないで楽しみましょう だと?勝手に遊んでくれと言いたい。


美咲から好きな人が出来たと告げられた時、即座に「分かった」とだけ言い部屋を出た事を思い出す。


特に美咲と別れて残念だとか悲しいだとかと言う感情が無かった。


彼女に対して愛情が無かったからなのかもしれない。


美咲は誘っても、誘っても、のって来ない雪哉にしだいに苛立ちを見せ始めた。


「誰と付き合っているの?」


「言っても美咲は知らない」


そっけなく言った所でスタイリングが仕上がった。


「お疲れ様でした」


口を尖らせている美咲に仕事用の笑みを向ける。


立ち上がった美咲は全身が映る鏡の前に立った。


顔を柔らかいふんわりとしたカールで縁取る髪型。


きつい女のイメージからふんわりと優しいイメージになった。


口を尖らせるのもそこまでで鏡の中の出来栄えにうっとりとした顔になった美咲だ。


「いつもながら素敵ね ありがとう 雪哉 また来るわ」


「ありがとうございました」


他人行儀に頭を下げる雪哉に美咲は肩をすくめた。




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