Love Step
「杏梨、座れよ」


杏梨が興奮して立ち上がったせいで、ますます周りから注目を浴びている。


力なくイスに座ると、峻を睨んだ。


「本当の事だよ 雪哉さんに聞くと良い 大人なんだから色々あってもおかしくないよ あの人は ルックスなんて俺より上だし 雪哉さんの今までの女性関係すべてを気にしないくらい姉貴は雪哉さんが好きなんだ」


「峻くんは意地悪だっ!」


杏梨は再び立ち上がると出口に向かった。


「おいっ!杏梨!」


峻はチッと舌打ちをして杏梨を追いかけた。




店を飛び出した杏梨は並びにあるファーストフード店から出てきた制服を着た男子高校生の集団を目にして立ち止った。


足が震えて地面に根が生えたように動かない。


店から出た5,6人の男子高校生はその場で話し始めた。


通りは十分に広いのだが、金縛りにあったかのように杏梨の身体は動かなかった。


吐き気を覚えて震える手を口に持っていく。



「杏梨!」


通りに突っ立っている杏梨を見て峻は呼んだ。


すぐに追いかけたがまさかすぐ近くにいるとは思っても見なかった。


近づき杏梨の名前を呼んだが、振り向かない。


どうしたんだ?


「杏梨?」


杏梨の前に回って声をかけた途端、峻は驚いた。


涙をポロポロと流していた。


「どうしたんだよ!?」


両腕に手を置くと杏梨の身体から震えが伝わってきた。


「杏梨?」


「あ……」


「どうした?雪哉さんの話がそんなショックだったのか?」


「っ……ち、ちが……ぅ……」




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