Love Step
震える声で言った時、その男子高校生たちは駅の方向に向かって歩き始めた。


杏梨は呪縛から解かれたみたいにその場に座り込みそうになった。


「杏梨!」


倒れそうになった身体を峻が支えた。


支えて峻は驚いた。


杏梨の身体が異常に震えていたからだ。



「いったい どうしたんだよ!?」


「な、なんでもない」


発作を隠そうと必死だった杏梨は峻の腕から離れようとやっとの事で身体を動かす。


「そんなに震えていてなんでもないわけ無いだろ!?」


離れようとする杏梨をしっかり捕まえて言う。


「大丈夫だったらっ!」


更に激しく身体を動かし峻の腕から逃げようとする。


「……とにかく送るよ」


目の前のタクシー乗り場に杏梨を引きずるように連れて行くと待っていたタクシーに押し込み、自分も乗り込む。


運転手に行き先を告げタクシーが動き出すと隣の杏梨を見る。


片手を口元に当てて震えを抑えようとしている。


峻は眉根を寄せただけで話さない。


俺が雪哉さんの事を話したからこんなに動揺しているのか?

いや、確かに驚いたはずだけどこの様子はおかしい。

何かがおかしい……。

そう言えば、事故の時も救急隊員に対して様子が変だったな。

あの時は事故で動転していたせいだと思っていた。

……それに俺が俺が初めて声をかけた時もしゃがみ込み震えていた。



「……ごめんね 峻くん」


杏梨はやっと聞こえるくらいの声で峻に謝った。


「落ち着いてきたか?」


声は驚くほど優しい。


峻くんはゆきちゃんに似ている……。



< 159 / 613 >

この作品をシェア

pagetop