Love Step
* * * * * *



ソファーに座らせると彩のためにコーヒーを入れた。


「ゆっくり飲んで」


湯気のたったカップを彩の前に置く。


「いったいどうしたんだい?」


「……雪哉さん……私……もう女優をやっていけない……」


そう言うと両手で顔を覆い、再び泣き出した。


「それだけでは分からない ちゃんと説明して?」


目の前にいる彩より、杏梨を心配していた。


彼女の気持ちが治まるまでここに居てもらうが、気がかりなのは杏梨だった。


「先日の、杏梨ちゃんの事故……誰にも言わないでって……」


「もちろん、杏梨も俺も誰にも言っていない」


「雪哉さんじゃないんです!杏梨ちゃんが……杏梨ちゃんが記者に言ってしまったんです!だから記事に……優しいのは見せかけの酷い女優って……」


「なんだって!?」


そんなばかな……杏梨が言うはずがない。


その時、大きな黒いカバンを肩から提げた女性を思い出した。


あの女性が記者?

杏梨は知らないと言っていた……。

本当に分からないようだった。

きっと勧誘だったのだろう。




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