Love Step
「いや……行かない……」


ふるふると首を横に振る杏梨はもう一度峻の手を振り払おうとした。


「どうしたんだよ? って!お前、ほっぺた赤いじゃないかよ!」



まるで叩かれたかのような跡。

まさか、杏梨の様子がおかしいのは姉貴のせい?



「離してよぅ!」


店とは反対の方角へ走る。


「ちょっと待てよ!」


峻は追いかけた。





峻の車の助手席に座った杏梨は乗ってからずっと俯いていた。


運転をしながらちらちらと頻繁に視線を助手席に動かす。


「……姉貴、中にいたんだろう?」


杏梨の身体がピクリと動く。



どうして峻くんの車に乗っちゃったんだろう……。

向かっているのはどこ……?


聞きたいのに舌がうわあごに張り付いてしまったみたいに口が開けなかった。


「大丈夫かよ?」


峻の心配そうな言葉にも返事が出来なかった。




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